今から32年前、当時、私は㈱カネボウファッション研究所で主にトレンド分析や生活者研究をベースにしたアパレルのブランド開発や、地場産業振興業務に携わっていました。
仕事柄、繊維や繊維機械、ファッション系の学会にも出入りしていましたが、それぞれ専門化細分化が進みセミナーやポスター掲示など成果発表の場は、特定の技術者には良くても、業態や商品企画をする者にとってはオーバースペック状態だと感じていました。
その頃、合繊や紡績、染めや加工、アパレル、クリーニングや補修など繊維の川上から川下その教育までを網羅した、業界の進歩的な方々が、後にFMCの設立趣旨となる概念を引っ提げ有志で任意団体を作られたのが今から30年前のFMCでした。
まだユニクロ等、ファストファッションが台頭する前夜だったと記憶しています。
当時,若造(?)だった私は、仕事をする上でも有用に感じたため、趣旨に賛同し、重鎮の皆さんが口角泡を飛ばして激論される中、祐筆役として参加しましたが、当時参加された方は、皆意気軒高でした。
それから30年、人々の生活価値に占めるファッションやデザインの位置が変わり、2020年1月に始まったコロナ禍が、それをダメ押ししました。
FMCの活動は集会自粛ムードで休止をやむなくされ、2024年5月に再開したのですが、既に業界は萎縮状態にあり、人々の生活価値観も、暮らし方も大きく変わった中での再開になりました。
再開2年目の今、時代に合ったFMCの在り方を模索していますが、設立当初から変わらぬコンセプトである《セミナー参加者が、生活者のファッションやライフスタイルを設定するための情報提供》の継続が今こそ求められていると感じています。
FMCを、セミナーや事業所見学を通じて、時代を予兆させる先端的な事象と背景を知り、一緒に分析し仕事に生かす場だとご理解いただければ幸いです。
佐野勝彦
第5代FMC理事長
㈱カネボウファッション研究所チーフディレクター
㈱トンボ(トンボ学生服)ユニフォーム研究室長を経て
現在アイトス㈱Job Style &Gear Research室長。
(一社)日本ユニフォーム協議会参与
